第17回年次研究発表会実施報告、5件の論文発表に学会賞を授与
3月7日(土)、「テクノロジー×ライフ・イノベーション」をテーマとして第17回年次研究発表会を東京大学医科学研究所2号館会議室において、対面とオンライン方式で実施しました。全体では約70名の参加者を迎えて、林裕子(本学会会長)が司会と開会のあいさつを行いました。
発表セッションでは、企画委員からセッション運営の説明をした後、31件の論文を伴う発表があり、活発な議論が行われました。8名の審査員による厳正な審査の結果、発表論文の中からベストペーパーアワード1件、スチューデントアワード4件の学会賞を選考して、林田英樹審査委員長(学会誌編集委員長)から表彰を行いました。受賞された皆さま、おめでとうございます。最後に藤間良樹(本学会副会長)のあいさつで閉会いたしました。
■開催のあいさつ:林裕子会長
皆様、おはようございます。
本日は、第17回日本MOT学会年次大会にご参加いただき、誠にありがとうございます。主催者を代表して、開会のご挨拶を申し上げます。大学、研究機関、企業、そして社会人学生や学生の皆様など、多様な立場から約70名のご参加をいただいております。
今回のテーマは「テクノロジー × ライフ・イノベーション」と設定いたしました。本研究分野をテーマにするのは当学会ではおそらくはじめてです。
医療関連分野は私自身の研究分野でもあることから少々抵抗もありました。そして、これまで、ライフ・イノベーション関連の領域は技術経営のなかでは、傍流であったかもしれません。
一つの理由としては、所管官庁や(文科省、経産省→厚生労働省)、資金配分機関(科学研究費、NEDO,JST→日本医療研究開発機構AMED,厚生科研費)が異なることです。技術経営、すなわちMOT(Management of Technology)は、研究開発の成果を社会的価値へとつなげるための重要な学問領域です。本学会は、技術と経営、そして社会の橋渡しを担う場として発展してまいりました。昨今では、医療・ライフサイエンスを取り巻く環境の変化とインパクトの変化も踏まえ、大きく技術経営の視点が必須となり、今回あえてライフ・イノベーションをテーマに設定しました。
環境の変化とインパクトの変化の第一の要因はCOVID19です。社会と研究に対する影響は多大でした。今回は、当学会理事の加納信吾先生のご配慮で、伝統ある東京大学医科学研究所で本学会を開催できましたが、ここは1892年に北里柴三郎先生が設立された「大日本私立衛生会付属伝染病研究所」が前身です。そして、COVID19のパンデミック時もワクチンの研究開発や、政策、意思決定の拠点ともなっていました。
二つ目のインパクトは、技術融合、学際融合です。現在、ライフサイエンスや医療を中心とした科学技術は、かつてないスピードで他分野との融合を進めています。本日の大会でも、そうした「技術融合、学際融合」が重要なテーマとなっています。AIや機械学習と創薬、画像診断等との融合、医療ロボットやバイオメカニクス工学等のロボティクスとの融合、ナノテクノロジーを利用したドラッグデリバリーや分子診断等材料科学との融合、微生物や細胞設計、環境修復等化学や環境科学との融合、量子科学や物理、データ基盤との融合です。
最後のインパクトは、フォーサイトの視点です。MOTがこれまでも多く貢献してきた社会科学、倫理、政策に向けて、医療AIや遺伝情報の利用における倫理、個人データ保護、規制設計、国際協調など、科学技術の社会実装には社会科学の知見が不可欠です。科学技術が社会に受け入れられ、公共的合意を形成していくプロセスそのものが、重要な研究テーマとなっています。
基調講演では、これらを象徴する講師の方々をお呼びしています。
始めに国立保健医療科学院 健康危機管理研究部長であり、東京大学客員教授でもある冨尾淳先生に、「災害時の保健・医療・福祉―多機関・多職種連携に向けた政策の現在地と展望―」というテーマでご講演いただきます。災害大国である日本において、医療と政策、 そして多機関連携の重要性について大変示唆に富むお話をいただけるものと思います。
続いて、日本MOT学会講演として、大原記念労働科学研究所の椎名和仁先生より、「産業疲労研究の発展について―国立公衆衛生院と労働科学研究所―」と題してご講演いただき ます。産業と健康を結ぶ重要な研究分野の歴史と展望をご紹介いただきます。
午後の発表セッションでは、優れた研究に対してベストペーパーアワードとして金賞、銀賞、銅賞を授与いたします。また、社会人学生を含む学生の発表の中から、ステューデントアワードとして同様に金賞、銀賞、銅賞を表彰する予定です。若手研究者や学生の皆様の挑戦的な研究発表を大いに期待しております。
また、午後には二つの特別講演を予定しております。中江裕樹先生より「バイオ分野の国際標準化活動―MPSを巡る動向―」についてご講演いただきます。国際標準化は、研究成果を世界市場へ展開するうえで極めて重要なテーマです。
続いて、埼玉大学の古川雄一先生より、「クロスアポイントメントをきっかけにした産学発展」についてお話しいただきます。産学連携の新しい形として大変興味深い内容になるものと思います。
本日は、学際的な分野の研究者が、ライフ・イノベーションをテーマに活発に議論していただき、新しい知見とネットワークを生み出し、さらなるイノベーション、他分野への派生や貢献の場となることを期待しております。

場所:近代医科学記念館
■学会賞表彰
1.ベストペーパーアワード
学術的に新規性・独創性、実務的に実用性・発展性に富む論文に授与しました。
なお、以下は発表者(第一著者)のみを記載しております。
◆銅賞1件
論文名:「Futurepreneurshipの概念定義-立命館イノベーションスクールおける新カリキュラム設計と意義-」
(著者)湊宣明ほか:立命館大学
2. スチューデントアワード
学生を対象に、将来への発展性および潜在性を有する論文に授与しました。
◆金賞1件
論文名:「新規医療技術の普及に関する研究-ロボット支援手術を事例とした診療科間での普及差の解析-」
(著者)夏目祐介ほか:東京大学
◆銀賞1件
論文名:「グラントをソースとした新興医療技術のレギュラトリーホライゾンスキャニング方法論開発 ―心筋シートを事例としてー」
(著者)坂本友美子ほか:東京大学
◆銅賞2件
論文名:「素材商社の新結合への挑戦-大規模生活インフラの異なるメンテナンス事業の統合ビジネスモデル-」
(著者)川石浩ほか:東京理科大学
論文名:「過酷事故下の行為生成」
(著者)瀧波康修:埼玉大学

